どう作ったか
始まりは自分の工房です。プラスチックの収納箱が100箱を超え、箱の中にまた箱。どこに何を入れたかは、開けるまで分かりません。探す時間が積み上がり、見つからなければ買い直しになります。
在庫管理のソフトは、最初に諦めました。品名を打ち込む作業が要るからです。忙しい日に一度飛ばせば、そこから先の台帳は嘘になります。続かないと分かっているものは作りませんでした。
代わりに、登録の手順を「箱を登録して、中の品物を撮り、ボタンを押す」だけにしました。品名や型番は、AIが写真を見て書き込みます。人は何も打ちません。見つけるのは検索の仕事です。
途中で、道具の意味が変わりました。中身の一覧を、機器を持っていない人にも渡せるようにしたときです。取引先へ。保険会社へ。いつか、残された家族へ。自分が探すための道具が、「何があるか」を人に示すための道具になりました。
作ったものを捨てることもあります。一時期、写真は「あらかじめ登録したスマホで撮ったものだけ」受け取るようにしていました。その箱を実際に開けて撮った記録なのかを、確かにしたかったからです。ところが実機で試すと、iPhoneはその場で撮った写真から機種の情報を消してしまい、誰ひとり登録できませんでした。作り直すのではなく、縛りごと外しました。
いまはどの端末からでも受け取ります。そのおかげで、電波の届かない倉庫で普通のカメラを使い、事務所に戻ってからまとめて上げることもできます。撮った日は、撮った日のまま残ります。
作り始めて2か月半、100回以上改良を重ねました。直したい所はたいてい、お客さんより先にこちらが困ります。いまも同じ工房で使っています。